素晴らしい。
オリバーストーン(米)によるキューバ最高指揮官フィデル・カストロに直に迫ったドキュメンタリー映画。
革命、社会主義国家と聞くだけでなにやら危険な、偏った先入観を持ってしまいがちだし、かくいう僕も少なからずそういうものは持っていた。
チェ・ゲバラの取り上げられ方も手伝ってるしね。
しかしここで見られるカストロは素晴らしい指導者だし、建前で押し通してる風にも感じない。
なんか自分の知識のなさに改めて呆然としたってのもある。
カストロはオリバーストーンが「本にこう書いてあったが...」「聞いた話だが...」という質問にも真摯に答えているが、結局は「そう書いてあるのか?書いてあることはすべて信じられん」という感じである。
思い出したんだが、名古屋グランパスの新監督に就任するストイコビッチ(ピクシーじゃなく、ミスターと呼べらしいがw)の本でユーゴスラヴィア紛争の際の西側の報道がことごとくセルビア(ピクシーの故郷)が悪、と報道していたことに憤りを感じていたというくだり。
何が本当なのか?
僕らは入手できる本なり、テキストなり、文献なりで得た情報がベースになる。
いちいち「ここに書いてあるのは本当か?もっと違う本も読まないとな〜」とはなかなか思えないし、存在してる本のいずれかに真実が必ずある、と誰が宣言できよう。
そう考えると、僕はこの映画を見てカストロって人にウソはないと信じているが(別に世界中キューバみたいになろうぜ〜!なんて言う気はない)、受け手の判断に任されちゃうというかね。
これは何にでもあてはまるんだろうけど。
カストロが撮影を一回も中断しなかったとか、編集後のフィルムを見て削除希望など一切なかったこととか、撮影中のアポなし路上訪問(?)時の国民の、そして国民への反応(フィデル!フィデル!のような社会主義国家にありがちな独裁者崇拝的な熱狂さは微塵もなく、めっちゃフレンドリーだし、他先進国に比べ、安全(無防備では?と気になったりしたw)さを感じたし、例えば学校の生徒のコメントを聞いても、圧力で言わされているような要素など感じないし)、空港での別れのシーン、オリバーストーンが「良い人生を」とカストロに告げたのに対し、「君にも同じ言葉を。良い人生だよ、君に会えた」、などなどは僕にカストロ感を大きく変えさせた。
オリバーストーンはやはりアメリカで知り得た情報を元にインタビューを進めていったわけで、決してカストロのゴキゲンを伺っていたわけではない。
当たり前といえば、当たり前だけど。
実はオリバーストーンの撮影前の心情と撮影後の心情がどこかに書いてないかな〜と気になったんだが、ちょっと見つけられなかった。
僕なんかよりよっぽどキューバに対する情報や感情を持っていただけに、どう感じたのか知ってみたいなと思った。
ちなみにこの映画、各国の映画祭で上映、絶賛された映画であるが、アメリカでは検閲に合い、上映されていない。
1つ思ったことがあって、国際情勢に関する報道の総まとめ団体ってあるんだっけか?
なんか政治的圧力とか一切あり得ない中立の組織が存在して、世界のどこで情報を受け取ってもそれが「真実」であるという保証を与える役割を持つ。
国民がまともな情報を入手できない国家もあるから....う〜んですけど(笑)
他社、他国を出し抜く情報とかに躍起になって、それが名誉や対価になって、報道マンのモチベーションになったりするんだろうから、難しいのは分かるが。
何が真実かてめえで判断しろ言われてもねえ。。。なかなか。。。
と言っててもしゃーないので、無限の知識の中からピンと来たものを勉強することにしましょう。
なんだこの頼りない宣言。
彼の言葉が映画のなかにこうある。
「人は生まれてきたとき、思想や価値観を持ってない。人生はそれらを構築していくためのものだ」
オススメである。
キューバ wiki
「2005年11月8日、国連総会がアメリカに対し、トリチェリ・キューバ民主化・ヘルムズ=バートンの三法廃止と経済封鎖解除を求める決議を14年連続で採択」
今勉強したことですが(笑)、これらの法案はめっちゃ簡単に言うと、アメリカ人はキューバに旅行できないとか、貿易できないとか、いわゆる断絶の法案ですね。でも世界的には「それおかしいやろ!」と14年言い続けていると。。。トホホです。
2003年に「キューバ訪問禁止解除の法案を可決」のとのことで、この映画はまさに今だからこそ出来たわけですね。