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軽〜くトイカメラ、トイデジってものをなぞりつつ、VQ1005 〜その復刻である VQ1015 Classic までの波瀾万丈ヒストリーを時系列でまとめてみました。

すでにユーザーの方ですとか、トイカメラに精通している方には釈迦に説法だらけのテキストです。具体的には「トイカメラって何となく知ってるけどトイデジって存在を最近知って興味あり。で、VQ1005 ってのが人気者?今売ってる Entry とか Classic とかってどういうもの?」そんな方を想定してみました。


May 31, 2009

1990 年代 トイカメラというジャンルの誕生


LOMO LC-A
LOMO LC-A

1990 年代半ばを起源とするであろうトイカメラというジャンルですが(トイカメラ的なカメラはそれ以前にも存在してましたが)、こと日本に関して筆者の記憶オンリーでざっくり言うと 1998 年の LOMO LC-A(以下 LOMO)の大々的な国内販売開始&イベントがきっかけでしょう。ちなみに筆者も何の因果かこの年入手しました(トイカメラが何たるかまったく知りませんでしたが)

以降、トイカメラ界のドン(筆者独自調べ)HOLGA や HOLGA ファミリーなどの登場により広く(とはいえニッチに)知れ渡るようになりました。

ロモ(LOMO)ウィキペディア

ホルガ(HOLGA)ウィキペディア


HOLGA
HOLGA

そもそも LOMO にしろ、HOLGA にしろ、今あるトイカメラ的な用途を意図した製品ではなく、安価な素材や生産工程のいまいちさからくる「作り自体のチャチさ」に起因するいっぱしの(?)カメラからは欠点としかみられなかった点が受け、「トイカメラ」界に君臨することとなりました(LOMO についてはチャチって失礼な気もしますが)

しかもよく「個体差」と耳にすることがありますが、モノによって品質にばらつきがある、ヘタすると当たり外れが存在するというのも(これはやや困った、でも仕方ない)特長を持っています。

後述しますが VQ1005 も「チープ素材、作り自体チャチ、個体差あり」というトイカメラ悲しみの定義豪華 3 点セットを見事にクリアしています。


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2006 年 VQ1005 誕生


さて、トイカメラが世界を席巻し 10 年を経た 2000 年代後半

カメラの世界はデジタルが主流となったものの、各メーカーによる機能重視の戦いの最中、トイカメラを意識したデジカメはなかなか登場しませんでした。

「トイカメラ」はあくまでフィルムだ、という暗黙のこだわりがどこかあったのかもしれませんし、今あるデジタル部品でモノを作ればそこそこ品質のいいカメラが自然と出来上がってしまい、トイカメラ感を出すのは難しいという現実もあったのかもしれません。ま、なにより需要がなかったのでしょう。

VQ1005
VQ1005

そこに現れたのが、時代錯誤も甚だしい、今どき誰が買うんじゃいという低機能を搭載した VQ1005 というデジカメ(2006 年発売)でした。

ここでは詳細省きますが、コンセプト的には 2004 年発売の Veo the Mini Capture であり、メーカーである VistaQuest 社にしても大ヒットを目標に掲げ、仕様を固めたという性格の製品では決してなかったと考えます。

VQ1005 と同程度の機能のデジカメは 2000 年頃すでに出回っていましたが、まだ「トイカメラ」ユーザーの多くの心を掴む「なにか」が足らなかったためか、トイカメラ界でクローズアップされることなく役目を終えていました。

ただし、筆者が 2007 年に一目惚れをしたこの VQ1005 もまた、LOMO や HOLGA と同様「トイカメラ」というキーワードとは無縁のフィールドから登場してきたのです。


VQ1005 の開発、販売をしている米国 VistaQuest(ビスタクエスト) 社はデジカメ以外にも各種デジタル機器を取り扱っていますが(ここも露 LOMO(レニングラード光学器械連合)社と似てるといえば似てる)、2006 年の販売開始以降 VQ1005 を求めた多くの(主に米国の)ユーザーはその安価さ、そしておそらくそのコンパクトさ(および外観)に魅力を感じていたと思われます。

とはいえ、LOMO がソ連国内では相手にされなかったように、米国内での VQ1005 の評価も決して芳しくはなかったとみています。いかに安くても「イマドキ??」という機能でしたから。

2007 年当時、VQ1005 は安いショップでは「20 ドル(当時レートで約 2,300 円)デジカメ」として売られ、英語圏(主に米国)では「写りはこだわらないよ。安いしちっちゃくてキュート、子供のプレゼントにピッタリだ」なんて人が求めていただろうことがamazon.comのユーザーレビューなどから伺い知れます。


▼ amazon.com のユーザーレビューから一部意訳して抜粋


マイナス評価ばかり 3 連発しましたが、当時の英語圏での VQ1005 の購入動機 / 評価を如実に物語っている代表的なコメントばかりです。もちろん好意的なコメントもありますが、この時点では「トイカメラ」というより「お手軽価格で割とまともに写る小さいデジカメ」として面白がるユーザーが一部いたという感じです。

VQ1005 をお分かりの方はお分かりかと思いますが、例えばシャッターのタイムラグ(シャッター押してから撮影完了までやや時間があり、その間動けばブレる)は大人でも厄介な苦戦ポイントですから(慣れますが)、子供用にというのはきついでしょうね。


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VQ1005 発売から 1 年。トイカメラとして注目され始める─。


さて、2006 年の販売開始以来、好意的なユーザーには「安くてお手軽な、割とまともに写るデジカメ」と大方捉えられていた VQ1005 ですが、2007 年にはすでに「トイカメラ」的位置づけで楽しんでいるユーザーさんもいました。


2007-08-16

Detroit photographer Lindsey Yeo has been shooting with what she calls the "Holga of Digital Cameras", the Vistaquest VQ1005 which she bought for $20.

(デトロイト在住写真家リンゼイ・イェオ氏は、20 ドルで購入した彼女曰く「ホルガのデジカメ版」である VQ1005 というカメラで日々撮影を行っています。)


筆者が VQ1005 の写真を見たのもちょうどこの時期だったのですが、心の第一声はまさに「 LOMO じゃん」だったのです。

見た写真のほとんどが米国のきっと乾いた土地で撮られたものだったためか青空の青をはじめ、その発色が強烈で、まさに一目惚れでした。

例えば(↓)の写真は LOMO ユーザーなら細かいところ気にせずパッと見心鷲掴みにされそうな写真だと思いますが(VQ1005 ならこの手の写真はいつでも誰でも撮れるありがちなアレですが)こんな夕暮れの空とか。


ビビビと脳天撃たれ、ほとんど情報のないまま、なんとか買い寄せた VQ1005 は多くのユーザーがやはり感じるように「ちっちぇ〜!」でした。実はこのコンパクトさが筆者には大きく、例えば、LOMO なんかを持ち歩く時は「今日撮る」というハッキリした意志が必要だったんですが、VQ1005 についてはいわばケータイ感覚に近く、特別「今日撮る」と思わなくとも必須アイテムとして持ち歩く習慣が自然と身に付きました。

LUMIX が「手の平サイズ」のデジカメと謳っていますが、VQ1005 はまさに「手の中サイズ」です。土俵が違いますが(笑)


また、VQ1005 は「トイカメラ」から連想される「チープ素材(プラスティック主流でおもちゃっぽい)、作りがチャチ(だから素人でも改造できちゃうとも言える)」という点を図らずも踏襲、「写りがトイカメラ的、想像以上に小さい」といった特長に加え、「液晶がない」という最悪最強な機能を備えていました。


デジカメというと、ケータイですら撮ったその場で写真が確認(あ!ブレた。もう 1 回!とか)できるわけですが、VQ1005 はそもそも撮った写真をプレビューするタイプの液晶がなく、パソコンに取り込んだりするまでどんな写真が写っているのか知るすべがありません。

さらに、おまけのように付いているファインダーはやはりおまけで、覗いたまま写る保証は一切ない目安程度のシロモノですが、これにより、LOMO が提唱したノーファインダー(ファインダーを覗かずに撮る)でいっちゃえ、というところに落ち着きます。

それを応用し、めいっぱい背伸びした俯瞰ショットや地面を這う猫ショットなんてことも思い立ったら即気軽にできるため、自分流(オレ流)の楽しみ方ができるわけです。

その場で写真を確認できないので、当然「肝心なところ切れとるがな....」とか「ブレブレやん!」などの失敗があるものの(もちろん手ぶれ補正などありません)、意図しては生まれにくい奇跡のショット(個人差あり)が生まれたりするわけです。

失敗、成功含め写真を確認するのが「その場じゃない」というのは LOMO や HOLGA のようなフィルムカメラが現像を出して上がってくるまでどう写っているのか分からないのと同じ感覚で、「どんな風に写ってるだろう」と待つ間の、ある種ワクワク感を期せずしてもたらしてくれるわけです。


「作りがチャチ、写りがトイカメラ的、小さく携帯性バツグン」に「撮った写真を後で見るワクワク感、撮り方でさえ遊べちゃう自由度」が加わり、技術的には 10 年近く前(2000 年頃)の、いわゆる時代遅れの機能にも関わらず、トイカメラの「デジカメ版」を望むユーザーの嗜好にフィットしたと言えるかもしれません。

また、普及が進むにつれケータイ風にデコレーションしたり(最近見ないけど....実は紹介したい)、ケータイ用の各種外付けレンズを使ったり改造してマクロ(10 数 cm 先の被写体を激写)対応にしたりとユーザー自身が楽しみ方を模索していき「自分流にカスタマイズできちゃう」というポイントが加わっていくことになります。


さて、VQ1005 ヒストリーと銘打つ以上ふれないわけにいかないネタに寄り道してみます。おそらくですが VQ1005 を「トイデジ」としてより先に世界に印象づけたのは VQ1005 を改造した「猫カメラ( CatCam )」の存在でしょう(CatCam、CatCamera などは現在このカメラの作者の登録商標になっています)

2007 年 7 月(これもVQ1005 発売から 1 年後ですが)に最初のバージョンの CatCam がリリースされましたが、これは文字通り、猫の首にぶら下げ、彼/彼女の本能の赴くままの日常を彼ら目線で自動撮影していくというもので、作者はこのカメラのために価格や機能面などから VQ1005 を選択し、結構な改造を施し完成させています。最近は CatCam のムービー版を手がけてもいるようです。英語、ドイツ語のみですが、興味ある方は覗いてみてください。


CatCamera using VistaQuest VQ1005


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アジアがリードするトイデジ・ワールド


さて、箸休め的にちょっと本線から外れてみます。


「トイカメラ」という波は LOMO をトイカメラとして世界へ展開したオーストリア・ウィーン発になりますが、ブームというレベルまで持ち上げ、今なお衰退することなく続いている要因の 1 つは間違いなく日本、台湾をはじめとする東アジアのユーザーにあると筆者は考えています。

一旦ここで書き終えたんですが、また面倒なクセが現れまして「ホントかよ〜??」って声(仮定)に反応し、確固たる証拠にはなりませんが、ちょっと遊んでみました。

ズバリ、「トイカメラ」vs「Toy Camera」、「トイデジ(デジトイ)」vs「Toy Digital Camera(Digital Toy Camera)」を検索し、そのヒット数を比較してみました。


トイカメラToy Camera
検索件数約 543 万件約 71.7 万件
トイデジToy Digital Camera
検索件数約 76.7 万件約 4,520 件
デジトイDigital Toy Camera
検索件数約 883 件約 3,270 件

ソース:Google(May 27, 2009)

※アルファベットの検索は英語モードにして全世界対象に検索した結果


結構驚異的なデータなんですが、なによりどうやら英語圏では「トイカメラ(Toy Camera)」という言葉自体日本ほど使われていないということ。


  • 「トイカメラ」という日本語は「Toy Camera」の約 7.5 倍も使われている!!
  • 「トイデジ」という日本語は「 Toy Camera 」より使われている!!

LOMO を最初に日本で販売しブレイクさせ、今も多方面に疾走中の大森氏曰く “「トイカメラ」って言葉はアメリカから持ってきた”ってことなのでこの逆転現象は興味深いです。

上記データより、日本では「トイカメラ」を 1 とすると「トイデジ」は 0.14。

一方、英語圏では「 Toy Camera 」を 1 とすると 「 Toy Digital Camera 」「 Digital Toy Camera 」合わせても 0.01。

つまり英語圏では日本の 1/10 くらいしか「トイカメラのデジカメ版」が “言葉” として認知されていないだろうことが分かります。

もちろん「 Toy Camera 」「 Toy Digital Camera 」といった言葉は使わずに LOMO、HOLGA、VQ1005 その他トイカメラ、トイデジに関する話をブログ等に展開している方もいるとは思いますが、それにしてもこの数字は驚きです。

余談ですが、パイをでかくして「 Digital Camera 」で検索するとヒット数は約 9,600 万件となり、日本語での「デジタルカメラ」「デジカメ」のヒット数を合わせた約 5,020 万件の倍近い数字を叩き出しています(=日本より英語圏全世界の方がデジカメ市場が大きく、ユーザーが多いと推測される)んで「トイ」の部分の日本と英語圏の認知度の差が相当あるんではないかと考えられます。


↓は VQ1005/Genie III のユーザー増加に加速がついていく状況下で、以前同じようにユーザーってどれくらいいるんだろと独自に調べてみたものです。


VQ1005/Genie III(ついでに LOMO)なんちゃってユーザーシェア(2008/4/24)


VQ1005 は米国発ですが、やはり「トイカメラ」的位置づけとして楽しみ出したのは日本のユーザーでしたし、その後すぐ登場する(発見される)ことになる Genie III も台湾で一気にブレイクしました(台湾では VQ1005 は Genie III の倍の値段したため、Genie III ユーザーが圧倒的に多い)

VQ1005、Genie III がはじまりというわけではないと思いますが、どこからともなく「トイデジ」(トイカメラのデジカメ)という言葉が浸透し出し、時に VQ1005 をはじめとする一大ファミリー(?)をトイデジの代表格のように取り上げるケースが出てきました。


頻繁な書き込みこそなくなりましたが、台湾での盛り上がりは LOMO TAIWAN GROUP 内の「Genie III」用 BBS を見ると分かります。大胆な改造や着色されたフィルムを使った撮影法などチャレンジの歴史も垣間見られます。


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VQ1005 製造中止─。


閑話休題。


2007年11月、まだ日本で VQ1005 が販売されていなかった頃、ショッキングなニュースが舞い込んで来ました。

それはVQ1005 はすでに製造中止になっているというものでした。


悲しいお知らせ〜バイバイ VQ1005(2007/11/28)


Genie III
Genie III

ただ、その悲しいお知らせと同時にうれしいお知らせも入ってきました。

それはVQ1005 とウリ二つな Genie III という製品が売っている(これは一体なに?)というものでした。

ちなみに Genie III のメーカーは VistaQuest ではなく、米国 Bell and Howell 社です。


うれしいお知らせ〜ハローGenie III(2007/11/28)


ショッキングな「 VQ1005 生産中止」を受け、なんとかゲットしようと海外のオンラインストアから個人輸入をしたり(送料の方が高くついたりしてましたが)、某 SNS のコミュニティ内にて米国在住の方がその Genie III のまとめ買いを募ってくれたりし、需要と供給のバランスがちぐはぐながらも着実にユーザーが増えていき、目前に控えた国内販売前夜といった盛り上がりを見せていました。

ちなみに、発見された Genie III と VQ1005 は結論としてはほぼイコールと考えられる製品でした。しかも両者ともに 2006 年製造という点も一致していました(Genie III については製造は 2006 年ですがリリース時期は不明です)


VQ1005 と Genie IIIは 同じなのか?(2007/12/15)


このような経緯から、2007 年 9 月にスタートを切った本サイトの名称は(一応若干迷った末)何のヒネリもなくこの頃「VQ1005 | Genie III world」となったのでした。チャンチャン。


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待ちに待った VQ1005/Genie III 国内販売開始


「 VQ1005 製造中止!」「 Genie III 発見!」の報から 1 ヶ月後の 2007 年 12 月の暮れ


いよいよプロキッチンさんが VQ1005 の、Hot-Air Balloon さんが Genie III の国内販売を始め、間髪容れず VQ1005 や Genie III を並行輸入し販売するショップさんが続々登場しました。

これを機に、年をまたぎ 2008 年 1 月、2 月、3 月で一気にユーザー数増加に加速がついたのです(上記なんちゃってユーザーシェアの冒頭のテクノラティのデータでも明らか)



© bookcan

まさに時を同じくしてお隣台湾でも 2008 年 3月、 Genie III (台湾では「精霊」と表記されたりしています)のまとめ買いが台北、台中市内で 2 日間にかけて行われるなど盛り上がりを見せていました。このまとめ買いの雰囲気(写真結構あり)は個人的には1998 年の LOMO のイベントを思い起こさせるちょっと懐かしい光景でした。


しかし、前述の通り、すでに VQ1005 は製造を中止しており、「予想よ当たるな」の期待むなしくほどなくして完売、次回入荷未定となり、一転、入手困難な状況が訪れました。


今、振り返るとこれも不思議なんですが、救世主 Genie III も VQ1005 の後を追うように軒並み完売となり、2008 年 4 月頃にはすでにどのショップからも姿を消していたのです。次回入荷はいつになるのやら....。いや、すぐ入荷はするんですが...。この話はのちほど。


VQ1005、Genie III の価格は販売時いずれも 4,000 円台後半、5,000 円弱でしたが、完売以降、オークションでは 15,000 円などの高値をつける事態が相次ぎました。


2008 年前半V Q1005 やGenie III を販売していたショップリスト


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Genie III 再生産で再び登場─。しかしそれは…


即完売となり、一旦国内ショップから姿を消した Genie III ですが、それほど待たされることなく 2008 年 4 月、それまで Genie III を扱っていたショップに再入荷の吉報が入りました。めでたし、めでたし。


しかし!


残念なことにこの Genie III はそれまでのモノと中身(当然写りも)の違う製品だったため、カメラピープルストアさんでは販売を控え、Hot-Air balloon さんではこれら 2 つのタイプの Genie III の比較写真や情報を開示した上で、より価格を抑え提供するなどの策がとられました。

「製品名、見た目が同じながら実は違うモノ」という前代未聞(筆者調べ)の VQ1005、Genie III にまつわる悪夢の歴史はここから始まったと言えるでしょう。

情報がなければ購入時に区別のつかない状況から、俗に言う「新型」「旧型」といった呼称がユーザーサイドで自然発生的に使われる(使わざるを得ない)ようになったのです。


これは想像ですが、VQ1005 の盛り上がりに確信をもたれた各ショップさんが Genie III の発注をガンガン行った。ところが Genie III 自体も最近の製品ではなく(VQ1005 同様 2006 年製造)、在庫に限りがあった。工場(?)では「えらいこっちゃ。ようさんオーダー来たで〜。急ピッチで組み立てないかん!」とラインに乗せた。乗せたはいいが、何が受けているか理解していない工場サイドはちょっとした部品の違いで写りが変わり、それが受け入れられないことまで読めず、「外見が同じで中身の違う製品」をウッカリ生みだしてしまったのではないか。想像終了。


整理すると、2007 年 12 月 に Hot-Air balloon さんが販売開始した Genie III(ほぼ VQ1005 とイコール)が 旧型、 2008 年 4 月に再入荷された Genie III が 新型ということになります。

また、ややこしいことに、ここで言う新型 Genie III の方が旧型より古い部品で作られているのです(変な言い方ですが言い方を変えると「旧型の方が新製品」と言うのが筆者の解釈です。そう考えると「新旧」を逆に呼べば決着がつくんですが、後から出てきた方を「旧型」と呼ぶのも妙ですし、混乱の元です。今やこの新型 Genie III 自体限りなく入手困難でもあり、真相はヤブの中ですが)

この逆転現象についてここでは詳細は省きますが、VQ1005 の先祖にあたる Veo 社のデジカメ(2003 年製造)と深く関連しており、筆者は Veo Genie III とここでは記載してきています。

なお、旧型 Genie III(ほぼ VQ1005)と新型 Genie III の比較は以下になります。


Genie III(旧型)とGenie III(新型:Veo Genie III)の比較(2008/4/5)


まさか Genie III (旧型)まで生産終了していたとは寝耳に水というか、ホントに短期間に天国と地獄を体験したような感じです(いつも大げさです)。

国内で簡単に VQ1005、Genie III が入手できたのはほんの束の間(3 ヶ月程度)のことだったというわけです。


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VQ1005 再生産で再び登場─。しかしそれは…


VQ1005 が姿を消したのは 2007 年 12 月の販売開始からわずか 2 ヶ月ほどのことだったでしょうか。

すでに海外のオンラインショップでも軒並み入手困難となり、高額なオークションに頼るしかすべのなかった 2008 年 4 月、とあるショップさんにVQ1005 大量再入荷。予約受付中!という見出しが躍りました。

それまで VQ1005 を扱っていたプロキッチンさんのもとにも同様に再入荷の知らせがあったようですが、届いたサンプルを試し撮りし確認したところ「これまでの VQ1005 とは違う」という結論に達したようでした。

これが現在も流通しているいわゆる「新型 VQ1005」だったのです。


新旧 VQ1005、新旧 Genie III 4 製品徹底比較(2008/6/1)


もともとカメラを扱っていたショップではなかったプロキッチンさんですが、新旧の VQ1005 の画像を解析しつつ、ユーザーアンケートもふまえ、この「新型 VQ1005」の販売を控えることを決定しました。

と同時に、オリジナルの VQ1005 を求めるユーザーの声に応えるべく VistaQuest 社と協議を行い、VQ1015(仮称)の開発を行うことをアナウンスしました。

2008 年 5 月のことでした。


うれしいお知らせ〜ハローVQ1015(仮称)(2008/5/19)


そしてこの頃、すったもんだあった新型 Genie III もいつしか店頭から消えていました。


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新型 VQ1005 席巻の 8 ヶ月─。


2006 年リリースのオリジナルの VQ1005(いわゆる旧型)が全世界で完売となり、ほぼイコールである Genie III がいなくなり、再入荷した新型 Genie III も姿を消し、2008 年 5 月頃から 12 月にかけての半年強ほどの期間は新型の VQ1005 のみが市場に出回り続けました(※ 2009 年 5 月現在も販売中です)


VQ1005 2008
VQ1005 (2008)

ちなみにこの時点で分かっていたことは、「オリジナルの旧型 VQ1005 と新型 VQ1005 は違うモノだ」という点のみでした(といっても旧型を求めていたユーザーにはうやむやにできない大きな事実ですが)

ところが 2009 年 5 月現在、新型 VQ1005 にも製造時期によって 4 つの種類があることが分かっています(↑写真のようにレンズ穴(+レンズ?)の大きさの違いで分かるタイプもあります)。


4 パターンの新型 VQ1005(2009/4/5)


筆者は新型 VQ1005 を所有していませんので不明点ばかりですが、新型 VQ1005 同士でも明らかに写りの違うものが存在することは確認しています(4 種類すべてが違うとは正直思っていませんが)

例えば、中でも特徴的なソフトフォーカスがかった描写をみせる「2008:10:15 版が欲しい」と願ったところで購入時に確認することは難しいと思います。気になる場合はダメもとで取り扱いショップさんに聞いてみるしか手はありませんが、ショップさんにしてみれば「そんなん聞いてないよ〜。メーカーだって同じって言ってるよ〜」というスタンスをとらざるを得ないと思います(新型 VQ1005 の際も VistaQuest 社は旧型と同じだ(正確には、新も旧もない同じモノだ!)と言い張っていましたし、とばっちりはショップさん側で罪はないのです...嗚呼)

VQ1005 はこういう写りだ、という先入観を持たず楽しもうというスタンスであれば無理に「違い」を詮索しない方がいいかもしれません。


オリジナルの VQ1005 のような写りより、新型 VQ1005 が好みというユーザーさんももちろんいますので新型 VQ1005 を否定するつもりはありません。

現に VQ1015 Entry リリース前のプロキッチンさんの元に「新型 VQ1005 も扱ってほしい」というユーザーの声があり、当初は封印しながらもラインナップに加えていったという経緯があります。

ただ、今後は「新型がイイ!」「新型スキ!」というのがどの新型を指してのことなのか即分からず、一括りに「新型 VQ1005」で括れない悩ましさが筆者的には痛かったりします(笑)


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「トイデジ」を全開に意識した VQ1005 チルドレン登場─。


筆者個人レベルでは VQ1005 と言えば旧型を指してますし、あの描写に魅せられた一人なので新型 VQ1005 だけが販売されている状況に正直ヤキモキしていました。

ありがちなケースなんですが、「新旧」の存在を知らず新型 VQ1005 を購入、しかし Flicrk やブログ等で見てきたような LOMO/HOLGA(or トイカメラ)っぽいテイストが感じられず、結果「ガッカリ...」というパターン。そのまま「新旧」の存在を知らぬまま「割と普通のデジカメ だったねー」という印象で去っていかれるのにジレンマジレンマなのでした。

最初っから「新旧」の存在を知った上での購入とか、後で「新旧」の存在を知りながらも「これはこれでスキかも」というケースばかりならよかったのですが...。

情報過多でも混乱してしまいますが、取り扱いショップさんにはユーザーの視点にたった必要な情報を購入時に的確に伝わるよう僭越ながらお願いしたく、切に。


VQ1015 Entry
VQ1015 Entry

さてさて

2008 年 12 月。

そこに登場したのが、半年ちょい前にアナウンスされていた VistaQuest+プロキッチンのコラボによる VQ1015。

製品名から(仮称)がとれ、まずはトイカメラ初心者対象と銘打ったVQ1015 Entry が販売開始されました。

プロキッチンさん発案の「VQ1015(仮称)プロジェクト」はあくまで旧型 VQ1005 の再現だったと思われますが、その開発途上で VQ1015 Entry が生まれたと考えています。

のちに登場する VQ1015 Classic への「つなぎ」だったのかもしれませんが、VQ1015 Entry は VQ1005 にはない(アメリカーン色排除傾向な)カラーバリエーション、限定色、ファームウェアなど新たな試みが盛り込まれ、魅力的な製品として提供されたと思っています。


VQ1005(旧型)と VQ1015 Entry の比較(2009/1/11)


Minimo
Minimo

また、前後しますが VQ1015 Entry 発売の 1〜2 ヶ月ほど前にあたる2008 年 10 月、シンガポールの Pocket Arts 社が非常に VQ1015 Entry 的な(筆者比)テイストを持ったMinimo という製品をリリースしています。

販売時期から開発時期を想像で遡ると、VistaQuest 社を経由しているかはともかく、VQ1015 Entry と同様、新型 VQ1005 を知り、「じゃ、もっとトイカメラ的なヤツ作っちゃおうぜ」と VQ1015 開発とほぼ同時期に動き始めたプロジェクトではないかとふんでいます。


Minimo という名称で察しのいい方は分かるかと思いますが、マーケティングメッセージとして LOMO を全面的に押し出した製品であり、商標問題はさておき(さておいちゃいかんけど)「デジタルロモ」というキーワードで展開しています。写り自体は VQ1005 でも VQ1015 Entry でもないですが、同じファミリーであることは一目瞭然で(ようはもう優劣じゃなく好みの問題)、筆者曰く「VQ1015 Entry とは異母兄弟」です。

それら 3 台で撮り比べをした上で「どれが一番 LOMO っぽいか?」と問われたらこう答えるでしょう。

「写真による。VQ1005 が一番 LOMO っぽいものもあれば、VQ1015 Entry が一番 LOMO っぽいものもあれば、Minimo が一番 LOMO っぽいものもある」


Minimo とは?(vs VQ1005/VQ1015 Entry 徹底比較)(2009/4/11)


しかし、これだけ待ったんだからしばらくは大丈夫だろうという無防備な安堵に反し、 VQ1015 Entry はあっという間に完売となりました(限定色などは人気アーティストのチケット争奪戦さながらの分勝負でした)


開発に自社が関わっているということで間髪容れず再入荷だろうと勝手に思い込んでいたのですが、次回入荷までまたしてもインターバルが発生します(理由分かれば納得なんですが)。

VQ10XX ファミリーはやはり安定供給とは無縁という宿命を背負っているんでしょうか(笑)


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アップデートされたVQ1015 Entryと念願のVQ1005復刻版登場─。


VQ1015 Entry 販売から 4 ヶ月が過ぎた2009 年 4 月、やっと VQ1015 Entry の再入荷、販売が開始されました。


新旧 VQ1005 で面倒な対応に直面してきたプロキッチンさんなので「まさか!」とは思いましたが、ここで販売された VQ1015 Entry は 4 ヶ月前に販売されたものと仕様が変わっていました。製品名は据え置きです。

ただ、写りに一切変化はなく、機能的にアップデートされたという点でうれしい仕様変更ではありました。その仕様変更とは「待機中の電池消耗をカットすべく、保存用の内蔵メモリを取っ払った」という VQ10xx シリーズ悲願の待ってましたアップデートでした。

但し、デメリットとまで言わないにせよ弊害もあります。例えば、VQ1005 にしろ、Genie III にしろ、SD カードとの相性問題があり(メーカーなどによって使えないものがある)、何かしらエラーが発生した場合、SD カードを疑うことが多いのですが、その問題発生源の切り分けのための、 SD カードを抜いた状態で内蔵メモリに保存し同じ問題が発生するかといった手段が試せなくなった点です。

また、海外では仕様変更の情報が伝わっておらず、SD カード入れず試し撮りをして「撮れない!」と動揺するユーザーも少なからずいるのを確認していますし(ま、日本国内限定販売のような位置づけなのでそこは仕方ないかもですが)、できれば名称は変えてほしかったなと。

プロキッチンさん情報によるとシリアルの下四桁の数字が 4161 以降が保存用内蔵メモリのない新しい VQ1015 Entry(2G)です。長年苦戦を強いられた「電池やたらもち悪し問題」を初めて公式に解消した製品となります。


2008 年 12 月に販売された VQ1015 Entry と 2009 年 4 月にアップデートされた VQ1015 Entry の 2 製品について、それほどナーバスになる必要はないので本来区別したくないところですが、何か問題(エラー)があった時などどうしても事前にどちらか分かっていないと話がかみ合わないケースがあります(すでに経験しています)。

そのため、少なくとも筆者内では区別したく、機能的にアップデートされていることもあり、新旧ではなく、初回ロットの VQ1015 Entry を第一世代:1G(保存用内蔵メモリあり:シリアル下四桁 4160 以前)、改良された方を第二世代:2G(保存用内蔵メモリなし:シリアル下四桁 4161 以降)とかなり勝手に呼んでいます。100 % 定着しない自信がありますが、ここで 1G、2G とか出てきたら「ああ、あれのことね」と理解いただけるとうれしいです(笑)


VQ1015 Classic
VQ1015 Classic

VQ1015 Entry(2G:保存用内蔵メモリなし)発売と同じく2009 年 4 月、1 年弱の開発期間を経て、満を持しての真打ち登場と相成りました。VQ1015 Classic が数量限定で販売開始されたのです。

これはまさにオリジナルである VQ1005(旧型:2006 年製造)の完全復刻と言っていい製品になります。

VQ1015 Entry がトイカメラ初級者を対象とし魅力的な価格設定を行ったことから、割高感を感じ気味ですが、なにより当時オークションで 15,000 円レベルで取引されていたことと、二度と手に入らないと思われていたものってことを考えるとべらぼうな価格ではないかなと個人的には思います。

オリジナルの VQ1005 の描写を再現するにあたって、やはり 2006 年当時の、今やかき集めるのも大変だろう部品を使っているという点には並々ならぬ執念を、そして「よくぞここまで!」を感じます(数千台生産された模様ですが、部品が部品なので再生産は事実上不可能=限定販売というわけですね)


受け継がれた DNA:VQ1015 Classic vs VQ1005(2006)vs VQ1015 Entry(2009/5/24)


軽くまとめるつもりが、想像以上に長い文章になってしまい恐縮です(でもなんだかんだいつものことです...)。VQ1005 が火付け役となったこの流れ、VQ1015 Classic の登場で一段落切りつきそうですが、先のことは分かりません。おもしろいことが続けばいいなと(ちょっとした混乱も含め)なにげに思います。


また、ここではほぼ触れませんでしたが、VQ1005 リリースの 2 年前(2004 年)すでに見慣れたこのボディを使い、筆者が新型 Genie III を Veo Genie と呼ぶきっかけにもなっている Veo the Mini Capture というカメラが出ているんですが、その存在を知った際にこの VQ1005 ヒストリー の前哨戦にあたる話を書いていました。当然重複もありますが興味ある方は合わせてご覧ください。


VQ1005 の真相(全5回)(2007/12/30)


また、すでに廃盤であり入手不可能とされていたその Veo the Mini Capture を入手してのアレコレも興味沸きましたら是非。


Veo の真相 vol.1(2008/9/6)


ここ VQ1005 | Genie III world は上記経緯からまったく計算できず更新してきています。予期せぬ新しい事態に直面するたびにコンテンツを増やす、ということの繰り返しなため、サイト構成に四苦八苦(ま、あきらめとも言います)し分かりづらく申し訳ないのですが、VQ1005 や以降のファミリーに興味ある方はトップページが目次になっていますので各種コンテンツに是非アクセスしてみてください。


May 31, 2009





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